α様は毒甘な恋がしたい



 (いのり)さまと呼ばれる人を、私は椅子に座ったまま凝視してみた。


 黒アイラインで囲まれた、インパクト大の切れ長の目。

 マスカラがたっぷりのせられた、長くてバサバサなまつげ。

 小ぶりなのに存在感のある、真っ赤な唇。

 毛先が巻かれた赤ピンクの髪が似合いすぎていて、まるでプロ意識が強いトップモデルのよう。


 自己主張の強い顔面パーツのせいか、一見、性格がきつそうって思っちゃうけれど……


「初めまして。高3の九重(ここのえ)(いのり)よ。89盗っていうバンドで、ベースを担当しているの」


 赤ピンク髪を指に巻き付け、顔がくしゃるぐらい全力で微笑んでいて


「私ね、女の子になりたいくらい女の子が大好きなんだ。仲良くしてね~」


 女神様みたいなおっとり声を、奏でているからかもしれない。


 親しみやすい人だな。

 私のお姉さんになって欲しいくらいだよ。

 祈さんに対する警戒心は、私の中であっけなく解かれたのです。