α様は毒甘な恋がしたい


「やぁ~ 迷える子羊ちゃんたち、ごきげんよう~」


 ひっ!

 もう一人の麗しい美女も、私の方に向かって歩いてくるよ!

 胸まで伸びた赤ピンクっぽいゆるふわ髪を、魅惑的に揺らしながら。


「へー、あなたが記憶喪失ちゃんなのね」


 私の机の真横に立たれちゃったし。

 ……なぜに?


「髪の毛がサラサラなのね。フフフ、可愛いわ~」


 髪質を確認するように私の毛先をつまんで、唇を押し当てているんですけど。

 初対面の挨拶としては、色っぽすぎではありませんか。


 ちなみに誰ですか? 

 どなたですか?

 女子たちが「いのり様、いのり様」叫んでいるから、聞かずとも名前はわかりましたが……



 私から離れ、私と対面するように孝里(こうり)くんの隣に並んだ美女。

 多分ですが、男性だと思います。

 身長が高い。

 175センチを超えていると思う。

 スカートじゃなくて、ズボンをはいているし。

 胸元に揺れているのは、リボンじゃなくてネクタイだし。