α様は毒甘な恋がしたい


 世の民の心の病を治しに行くのはいいさ。

 でも何よりもまず、バンドメンバーの心を救って欲しいんだけど。


 なーんて心の中で嘆いたところで、リハーサル室に漂う重苦しい空気は浄化できないか。

 いのりんがいない今、僕が【エセ聖女様】の代わりを務めなきゃ!



 僕はトレードマークの真ん丸お目めをユルっと緩め、アーチ状に。

 口角を上げて、隣に座る戒ちゃんに陽だまり声を吹きかけた。



「ねぇ戒ちゃん、双子アイドルと何があったの?」

「……っ、……言えない」

「僕にも教えてくれないの_」

「……孝里(こうり)、本当にごめんね」



 まぁ、いつものことか。

 辛そうに瞳を揺らす時ほど、口を堅く閉ざすの。

 八神戒璃っていう男は。