α様は毒甘な恋がしたい

 
 戸惑いを漏らした僕に痛々しい笑顔を向けると、戒ちゃんはギターを床に置き、防音室の奥まで進んだ。

 壁に背をすべらせながら、力なくしゃがみこみ

「……っ」

 今にも泣き出しそうに眉を下げ、じっと床を見つめている。


 重い溜息なんか、何度吐けば気が済むんだか。

 そう思いながら、僕は戒ちゃんの隣に腰を下ろす。



 三角すわりをしている戒ちゃんは、膝にのせた腕に顔をうずめた。

 そして、だんまり。

 僕はお口チャックで様子見しているけれど、ただただ無音時間が過ぎていくだけ。


 こんな時は間違いなく、励ましのプロの出番なのになぁ。

 彼はライブ配信に行っちゃってるんだよね。

 89盗(はくとう)の麗しき聖女様かぶれこと、九重(ここのえ)(いのり)は。