α様は毒甘な恋がしたい



 声が裏返る叫びに驚いた戒璃くん。

 私から5メートルほど前に立ち、目を見開いたまま救急箱を抱きしめている。



「戒璃くんは私のことなんか忘れているみたいだけど、私ははっきりと覚えているの!」



 2年半前に約束してくれたよね?

 いつかお互いの左手の薬指に、シャボン玉みたいに輝くキラキラな指輪をはめようねって。


 
「運命の番だねって微笑まれたのが嬉しくて。

 ずっと戒璃くんと一緒にいられるんだなって思ったら、幸せすぎて夢みたいだなって喜んでいたのに。

 やっぱりごめんって、なに? 

 首を噛まれたのに、私たちは番になったのに、美心とは一緒にいられないってなに?

 そのあと、走り去って行っちゃって……」



 責めたくない、戒璃くんのこと。

 嫌われたくない、大好きすぎだから。


 それなのに……

 もうダメだ……


 一度開いてしまったハートの穴は、修復なんて不可能で。

 自分の中にため込んでいたどす黒い感情が、涙と一緒にあふれてきて止められない。