α様は毒甘な恋がしたい



 陶器の破片が飛び散る床の上で、お姉さん座りなんてしている場合じゃない。

 理解しているはずなのに。

 心の中が、ネチョネチョな感情に支配されていくのがわかる。

 怒りに似た震えが、背骨を駆け上がってくる。



「だっ…大丈夫?」


 戒璃くん、ラット状態から抜けたんだ。

 心配そうな焦り顔で、私を見つめないで。


「すごい血が出てる。待ってて、部屋の奥の棚から救急セットを持ってくるから!」


 2年半前、私の首を噛んだことを忘れているなら。

 私と出会ったことすら記憶にないのなら。

 お願い、放っておいて。

 近づかないで。

 優しくなんてしないでよ。



 私に対して「好き」の感情がないのなら

 これでもかってほど酷い言葉をぶつけて。

 戒璃くんのことを、大嫌いにさせてよ。