α様は毒甘な恋がしたい


「……え」


 我に返ったような、人間味のある驚き声。

 私の耳に届き、ハッとなり、視線を戒璃くんに向ける。


 涙のしずくをこぼしながらでも、はっきりとわかる。

 戒璃くんが、私に覆いかぶさったまま固まっていると。


 眉を落としていて。

 困惑気味に肩を震わしていて。

 とんでもないことをしてしまったというような焦り顔で。


 真上から私を見つめてくる姿に、隙を感じ……

 ――逃げるなら今しかない。

 私は手の甲で涙を拭き、血が目じりに塗りたくられてしまったことに気づきもせずに、ソファからおりた。



 生徒会室のどこへ逃げればいいのかわからない。

 戒璃くんに捕まらない場所に行きたいのか。

 本当は一番近くにいたいのか。

 パニックすぎて、私の願望さえも認識できないでいる。