今の俺の心臓の駆け具合は、異常だ。

 2年半前に経験がある。

 いや、大好きが暴走して、オメガフェロモンにあてられ、美心の首を噛んでしまったあの時以上に、心臓が爆ついている。


 俺の呼吸は、勝手に荒くなっているし。

 肌を突き破りそうなほど暴れている心臓は、ナイフで一刺ししない限り静まらないんじゃないかな?



 ――今すぐ、美心を生徒会室から逃がさなくては。

 ――嫌われたくない。

 ――美心を傷つけたくない。


 そう思いながらも、俺のとった行動は正反対で。


 ――雷斗と風弥に美心を奪われるくらいなら、俺が!


 独占欲が手に負えないほど膨れ上がってしまい……


 嫉妬心で吊り上がる表情筋を、放置したまま

 俺は、ブレザーに顔を埋める美心の前まで進むと


「ねぇ、なにしてるの?」


 凍りそうなほど冷たい声を吐きだし

 逃がさないと言わんばかりの力で、美心の腕を掴んだ。