「八神戒璃は、首を噛んだその日に美心を捨てた最低男です」
「業界のうわさじゃ、寄ってくる女優を拒まず食いまくってるらしいじゃん。アルファもベータもオメガも関係なく、何人もの女を自分の所有物にしてるんだってさ」
「……そう……ですか」
戒璃くんにとって私は、運命の番じゃなかったってことですね。
『運命の番』
それは唯一無二の特別な存在。
他の人は瞳に映さなくても平気なくらい、運命の番は一途に溺愛されるみたいですから。
「なんで世の民は、あんなクズで女たらしな男に心を奪われてしまうのでしょうね?」と、風弥さん。
「普段はおっとり王子。ギターを鳴らしながら歌う時は、オスのアルファフェロモンを振りまく皇帝顔負けのワイルド王子。そのエグいギャップに、やられる奴らが多いんだろうな」
雷斗さんの目も悲しそうに揺れている。
なんで私は、戒璃くんに恋心を盗まれてしまったのかな?
私は間違いなく、この世で一番のおろかな民だ。



