今日も、いつもの通り薄暗い部屋にひとりうずくまっていた。

光は、窓から差し込む月光だけ。

「ねえ、大丈夫?」

話しかけられて、初めて自分以外がいることに気がついた。

自分と同じくらいの歳の女だった。

顔には穏やかで美しい笑みが浮かんでいた。


差し込むのに明るく照らしてくれない月光がずっと大嫌いだった。

でも、彼女の微笑みはまるで月光のように静かで美しかった。

初めて、月を好きになれた。


「一緒に行こ? あっちで皆が待ってるよ」

手を引かれて、思わず足が進む。




その日、僕は月に恋をした。