ちなみに、友達の杏奈と真織には嘘をつきたくなくて。


 心配性なお兄ちゃんに言われて、一堂くんには男避けとして1ヶ月だけ恋人のフリをしてもらってるだけだって、一堂くんとの関係を正直に話したんだけど。


 なぜか二人は盛り上がっちゃって、大変だった。


『偽りでも、依茉が先輩と付き合ってるってことには変わりないよね?』


『そうそう。毎日一緒にお昼食べたりしてるんだし。いいなぁ、依茉ちゃん』


 そう言って、羨望の眼差しで見られただけだった。


『ていうか、彼女を二人以上掛け持ちしてる一堂先輩が、毎日お昼休みは依茉とばかり過ごしてるなんて……こんなこと初めてじゃない?』


『だよねー。もしかしたら依茉ちゃんは、先輩の彼女のなかでも特別に思われていたりして』


 そんなふうに二人から言われたけど。


『えー、それはないよ』と、わたしはすぐに否定した。


 だって、それは多分、一堂くんにとってわたしは、大事な親友の妹だからだ。


 きっと、ただそれだけの理由に違いない。