「いっ、一堂くん!? 何をして……」

「何って、ご褒美のキスだけど?」

「ご褒美って、何の!?」

「俺のこと、ちゃんと『一堂くん』って呼べたご褒美」


 そんなご褒美、いらないよ……!


「キ、キスはお兄ちゃんが禁止って、さっき言ってたよね!?」

「あれ。そうだっけ?」


 首を傾げる一堂くん。


 カラオケのときといい、まさか1日に2回もこの人に唇を奪われるなんて!


「仮と言っても、今日から俺たち恋人同士なんだから。キスしても別に問題はないよね?」

「……っ!」


 それは、そうだけど……。


「それに……」

「きゃっ!?」


 気づいたときには、わたしは一堂くんに床に押し倒されていた。


「俺、女の子と付き合うってなったからには、仮も何も関係ないから」


 息がかかるくらい彼に間近で見下ろされ、鼓動がバクバクと跳ね上がる。


「俺がハグしたくなったらするし。キスしたくなったらする。もしかしたら……それ以上のことも?」

「えぇ!?」


 それ以上のことって、なに!?


「まあ、これからは俺の彼女として、たーくさん可愛がってあげるから。今日から1ヶ月、よろしく依茉」

「うう……」


 ねぇ、お兄ちゃん。恋人役に指名した人、絶対に間違ってるよ。


 ああ……これからのわたしの1ヶ月、一体どうなるんだろう。