「依茉がいなかったら俺は……未だに学校もサボってただろうし、女にもだらしなくてダメなままだったと思う。それに、こうして実家に来ることもきっとなかった。多分、俺はずっと親から逃げていたに違いない」
父は渋々といった様子でソファに座り直し、母は俺の話を黙って聞いている。
「だけど、それじゃダメだって依茉が気づかせてくれた。依茉が……俺を変えてくれたんだ。俺は、そんな彼女とこの先も一緒にいたい。依茉が隣にいてくれたら、俺は今後どんなことだって頑張れる」
重い空気に、つい親から目をそらしそうになるが、俺は真っ直ぐ彼らを見つめる。
「もう依茉のいない人生なんて考えられない。高校生でそう思えるくらいの人に、俺は出会えたんだ。だから……父さんたちに、依茉との交際をどうか認めて欲しい。お願いします」
俺は立ち上がり、両親に向かって深々と頭を下げる。
「……まったく。いつからお前は、そんな聞き分けの悪い奴になったのか」
しばらく沈黙が続いたあと父が口を開き、大きくため息をついた。
「私や母さんがいくら彼女と別れるようにと言っても、慧がこんなにも譲らないなんてことは初めてだな。一体どこで教育を間違えたのか……」
父さんのこの口ぶり……やっぱり、今回もまたダメなのか。



