それから俺は家でだけでなく、学校やバイトの休憩時間と、時間のあるときはひたすら勉強した。


「ねぇ、慧くん。この問題が分からないんだけど……」


 期末テストまで1週間を切った、ある日の放課後。


 学校の空き教室で、俺の隣で数学の問題集に取り組んでいた依茉が声をかけてくる。


「ああ、これはこの公式に当てはめて……」

「なるほど。こう解くんだ! ほんと、慧くんの説明は分かりやすいね」


 依茉に微笑まれ、鼓動が小さく音を立てる。


「いや。俺じゃなく、依茉の飲み込みが良いんだよ」


 俺は少し照れながら、依茉の頭をくしゃっと撫でる。


 依茉の笑った顔を見ると、心が穏やかになる。


 依茉がただ隣にいてくれるだけで、俺はいつも癒されるんだ。


「あのさ、依茉。親に手紙を書いてくれてありがとう」

「え。手紙のことを知ってるってことは、慧くん……あれから実家に行ったの?」