「……慧さんの気持ちは分かったわ。でも、さすがにこの手紙だけで、依茉さんとのことが許されると思ったら大間違いよ」


 そうだよな。やっぱりダメか……。


 壁はまだまだ高いと分かり、俺は肩を落とす。


「いいよ。何度母さんたちにダメだと言われても、俺も簡単には諦めない。今日は、時間をとってくれてありがとう。また来るから」


 そう言うと、俺は実家をあとにする。


 今日の母との会話で、以前と比べて依茉の印象が少し良くなっている気がした。


 それだけでも、俺たちにとっては大きな進歩だ。


 空を見上げると、灰色の雲の隙間からはわずかに光が差していた。