だけど……。


 わたしは、慧くんのことがまだこんなにも好きなのに。


 家のために別れないといけないなんて、そんなの辛すぎるよ……。


 キッチンの床に崩れ落ち、わたしは痛む胸を手のひらでぐっと押さえる。


 もし、わたしが一堂グループと肩を並べるほどの良家の令嬢だったなら、慧くんとの恋も許されたのかな。


 みんなに、おめでとうって祝福してもらえたのかな?


「辛いなぁ……」


 わたしは、一体どうしたら良いのだろう。


 ひとり物思いにふけっていると、キッチンのテーブルに置いていたスマホが振動する。


 慧くんからの電話だった。


「……もしもし?」

『あっ、もしもし。依茉?』