「……悪いけど俺、お見合いなんてしないから」

「あら、嫌なの? 慧さんが気乗りしないのなら、別に今すぐじゃなく来月とかでも……」

「いや、そういう問題じゃない。俺は、お見合いなんて一生しない」

「一生しないって……何を言ってるの?」


 母親の表情が、だんだんと険しくなる。


「俺には今、真剣に付き合ってる大切な彼女がいるんだ」

「……は?」


俺の言葉に、母は目をパチパチとさせる。


「え……かっ、彼女!?」


 そしてしばしの沈黙の後、素っ頓狂な声をあげた母がソファから勢いよく立ち上がる。


 ああ……いずれ話さなきゃいけないとは思っていたけど。今はまだ話すつもりなんてなかったのに。


 つい、母に言ってしまった。


「ちょっと、慧さん。彼女って……! そんな話、聞いてないわよ!?」