手を繋ぎたかったって……。


 一堂くんにそんなことを言われたら、やっぱり嬉しいって気持ちが勝ってしまって。何も言えなくなる。


「さすがに俺も皆がいるところでは、ああいうことはしないほうが良いって分かってたけど……。依茉が、三原と笑いあったり仲良くしてるのをそばで見てたら……無理だった」

「え?」

「あいつじゃなくて、依茉にもっと俺のことを意識して欲しいって思ってしまった。依茉の彼氏は、俺なのにって……」

「一堂く……っ」


 一堂くんに首筋に口づけられ、かすかな痛みが走る。


「今日家に来てから、三原がずっと依茉のことをチラチラ見てるし。やっぱり心配になるだろ」

「心配しなくても……っ。わたしが好きなのは、一堂くんだけだよ……んっ」


 わたしはキッチンの戸棚に隠れる位置で一堂くんに抱き寄せられ、彼に唇を塞がれてしまう。


「だったら……俺のこと、慧って呼んで?」

「え?」

「三原と同じ苗字じゃなくて、これから俺のことは……慧って名前で呼んで」