「そもそも、どうして依茉なんだ? 慧の周りには、他にもたくさん女の子がいるだろ?」
もし俺が、依茉じゃない他の女子を好きだって言っていたなら……怜央はすぐに応援するって言ってくれたのだろうか。
「別に、依茉にこだわることはないだろう」
「実は俺……中2の頃からずっと依茉のこと、良い子だなって思ってたんだ」
中学時代、依茉に中庭で水をかけられたこと。
依茉がトマトについて力説してくれたことや、仮の恋人として付き合うようになってからの日々。
そして、俺の家や過去のことも全部包み隠さずに話すと、徐々に怜央の表情が柔らかくなってきた。
「そうか。中学の頃から、依茉を……。慧、家のことで色々と辛い思いをしたんだな」
「他の女で依茉のことを忘れようとしても、やっぱりどうしても無理だった」
俺は真っ直ぐ、怜央を見据える。
「俺は、本当に依茉のことが好きなんだ」
「……」
怜央が黙り込んでしまい、俺たちの間には重い空気が流れる。
怜央、やっぱりそう簡単には許してくれないのかな……。
俺は緊張で高鳴る心臓を、制服の上から手で押さえる。



