一堂くんの抱きしめている力が強くて、彼の腕からなかなか抜け出せずにいると。


 少しして、スースーと寝息が聞こえてきた。


 もしかして、一堂くん寝たの……? え、寝るの早すぎない?


 目の前の一堂くんは、とても穏やかな顔で眠っている。


 まつ毛、すごく長くてボリュームがあって羨ましいな。


 ていうか、普通にしててもかっこいいのに、寝顔まできれいだなんて反則だよ。


 一堂くんは1歳年上ということもあり、見た目は大人っぽいけど。寝顔はまだあどけなくて可愛い。


「ふふ。いつかのお返し」


 わたしは一堂くんの頬を指でつまんで、軽く引っ張る。すると、彼の顔がわずかに歪んだ。


「……ごめんね、一堂くん」


 さっきは照れくささもあって、つい『好きじゃない』って言ってしまったけれど。


 決してあなたが『嫌い』っていう意味ではないんだ。


 最近は一堂くんのこと、初めて会ったときほども苦手じゃないんだよね。


 一堂くんが苦手なトマトを克服しようとしているように、わたしも一堂くんのことを……今よりもっと好きになれたら良いなって思ってる。


 それはあくまでも、クラスメイトとして……だけど。


 一堂くんの温もりが心地よくて、それからわたしはウトウトして眠ってしまったらしく。


 目を覚ます頃には、もうすっかり日が暮れていたのだった。