一堂くんに、車で家まで送ってもらった日の夜。


 夕食の片づけを終えたわたしは今、入浴中。


 薔薇の香りがするお気に入りの入浴剤を入れて、ピンク色のお風呂に浸かってリラックスタイムの真っ最中なのだけど。


『ああ、やっぱり俺……好きだわ、依茉のこと』


 一堂くんのあの言葉が、あれからずっと頭にこびりついて離れない。


 何なの、あれは。もしかして、冗談?


 一堂くんは、そのあと『依茉……これから俺、本気出してもいい?』とも言っていたけど。


 あれは、どういう意味?


 あの後すぐにわたしの家に着いてしまったから、一堂くんに聞くことが出来なかったけど。


 あのときの一堂くんは、今まで見たことがないくらい真剣な目をしていて。


 とても冗談を言っているようには、見えなかった。


 触れるだけじゃないキスも……されちゃったし。


「……っ、やばい」


 わたしは、自分の唇に手を当てる。


 あんな貪るようなキスをされたのは、初めてで。


 あのときの一堂くんの、わたしを無我夢中で求めてくるような顔が、頭の中を過ぎる。


「うわぁぁ」


 わたしは、バスタブにチャポンと頭の上まで沈み込む。


 入浴中なのと恥ずかしさで、一堂くんのことを思い出しただけで身体がのぼせそうになる。