テストの点数が落ちたくらいで、なんでバスケのせいになるんだよ。
俺は、拳をきつく握りしめる。
『お前は将来、この一堂グループの跡取りなんだぞ!? 中学生でそんな点数をとっていてどうする!? お前には将来、T大に行ってもらわなきゃいけないってのに……』
父の言うT大とは、偏差値が日本一の難関国立大学。
『慧、部活はもうやめなさい。あんなものは、勉強の妨げにしかならない』
『父さん……!』
『まさか、成績が落ちた原因はバスケ以外にもあるのか? もしかして……女か?』
父の目が、より一層鋭くなる。
父に睨まれて、俺は去年のことを思い出した。
俺は中学1年だった昨年、ずっと片思いしていた女の子と付き合っていた。
小学校の卒業式の日に勇気を出して告白したら、OKをもらえて。人生で初めてできた彼女に正直俺は浮かれてしまい、成績も少し落ちてしまった。
だけど、好きな子とただ一緒にいられるだけで幸せで。この先もずっと、この子と一緒にいたいと思っていたのに……。
彼女と付き合って半年になる頃に交際がバレてしまい、親に強制的に別れさせられた。
『あのお嬢さんは、慧にはふさわしくない。お前には、将来私と母さんが決めた相手とお付き合いし、結婚してもらわないといけないのだから』と。



