「れっ、怜央!?」
いつの間にか、俺の横には怜央が立っていた。
「慧、最近よくここから窓の外を見てるよな」
「あっ、ああ」
「まさかとは思うけど、依茉のことが好きで毎日ここからあいつを見てるとかじゃないよな?」
怜央は、ギロっと鋭い眼光で俺のことを見てくる。
ほんとに怜央は、妹が大好きだよな。
怜央は、依茉に近づいたり好意を寄せる男がいないか常に目を光らせ、そういう男がいようものならば裏で徹底的に排除しているのだから。
このときは、まさか依茉が小学生の頃にストーカー被害に遭っていたなんて知らなかったから。
怜央はただのシスコンだとばかり思っていた俺は、ため息をつく。
「違うよ。俺はここからの景色を眺めるのが好きで、見てるだけ。ていうか俺……年下の女の子は興味ないから」
つい、親友に嘘をついてしまったけれど。
自分にも言い聞かせるようにして俺が怜央に伝えると、怜央はホッとした顔を見せる。
「それに、俺がここから窓の外の景色を眺めるのも、今日で終わりだ」
だって昨日、あんなことがあったのだから。



