「何? どうしたの?」
「先輩、昨日は本当にすみませんでしたっ!」
俺に向かって、彼女が深々と頭を下げる。
「あの、良かったらこれ……食べてください」
そう言って怜央の妹は、俺に赤いリボンでラッピングされた袋を渡してきた。
「クッキー作ってきたんです。昨日、先輩に水をかけてしまったお詫びに」
「へぇ。クッキー……わざわざ俺のために?」
「はい。でも、知らない人の手作りとか無理っていうのなら、捨ててもらって構わないので」
「“ 知らない人 ” じゃないよ。キミは、俺の大事な親友の妹なんだから」
俺はもらった袋を開封すると、さっそくクッキーを1枚口に入れた。
「うわ、すげー美味い」
「本当ですか!? 良かったあ」
彼女の微笑みは、まるで陽だまりのようで。
優しい笑顔に、なぜか痛いくらいに胸が高鳴った。
「それじゃあ、わたしはこれで。昨日は本当にすみませんでした」
俺にもう一度一礼すると、怜央の妹はパタパタと走って去っていった。



