俺は、怜央から依茉の偽の彼氏に指名される前から、ずっと彼女のことが気になっていた。


 ───俺が依茉と出会ったのは、俺がまだ花城学園中等部の2年生だった頃。


 自分でいうのも変な話だが、一堂グループの御曹司である俺は、幼い頃から女子に異様にモテた。


「あの。あたし、一堂くんのことが好きです」


 1学期の夏休み前のある日。昼休みに中庭に呼び出された俺は、ツインテールの女子に告白された。


 相手は、制服のリボンの色からして俺と同じ2年の女子みたいだけど……全然知らない子。


「気持ちは嬉しいけど、ごめん。俺、キミとは付き合えないわ」


 俺は中学生になってから、女子にこんなふうに告白されることがほぼ毎日で。


 人からのせっかくの好意に対してこんなことを言うのはダメだけど、毎日のように告白されていた俺は正直疲れつつあった。


「どうして!? あたしのどこがダメなの!?」


 俺が断ったら大抵の女子は、すぐにその場を去るのに。このツインテール女子は、簡単に引き下がってはくれなかった。