「好きです! 付き合ってください!」


 3月下旬。開花目前の、公園の大きな桜の木の下で。

 わたし、西森(にしもり)依茉(えま)・15歳は、ずっと好きだった同級生の小林(こばやし)辰樹(たつき)くんに人生初の告白をした。


「悪いけど……俺、西森さんのことは正直そんなふうに見たことがなくて。だから、ごめん」


 低い声でそれだけ言うと、何事もなかったかのようにスタスタと歩いて行ってしまう小林くん。


 えっ。もしかしてわたし……振られた!?


 どんどん小さくなっていく小林くんの後ろ姿を、わたしは呆然と見つめる。


 この公園の大きな桜の木の下で告白すると、恋が成就するって有名だったから。今日、勇気を出してここで告白したのに。


 わたしは、自分の髪の毛にそっと触れる。


 この栗色のロングヘアも、小林くんが長い髪が好きだって聞いたから、頑張って腰まで伸ばしたのにな。


 それなのに小林くん、少しの迷いもなくあんなバッサリと振るなんて……。


 わたしの目には、じんわりと涙が浮かぶ。


「……あははっ。やっべぇ」


 うん。ほんとに、やばい。


「俺、誰かが振られるところなんて初めて見たわ。はははっ」

「……え?」


 後ろから聞き慣れない声がして振り返ると、同世代くらいの男の子がこちらを見ながら爆笑していた。