光が殆ど入ってこないような狭い空間で、一人スマホを手に取る。

目に入るスマホ以外の光は私を億劫にさせた。

階下から聞こえる楽しそうな声も、近くの部屋から聞こえる耳障りな声も、そして大嫌いなあいつの声も、全てが嫌だった。

背中を壁に預けて座り込む。

「うわ。お前、そんなとこいたの。びびった」

ある瞬間、兄が階段を駆け上ってきた。

「うるさい。どっか行って。私は貴方が嫌い」

兄に言い返すと、何故かは分からないが、涙が溢れてきた。

「なんでよ。あ、一緒にゲームしようよ」

兄の能天気な声が、私をイラつかせた。

さっきは“あいつ”の味方をしたくせに、どういう風の吹き回しだろうか。

「しない。どっか行って」

私が答えると、兄は少し不満げに階段を降りていった。



ちがう。兄は味方じゃない。姉は論外だし、母ももうひとりの兄も、全員敵だ。何かあればすぐに“あいつ”につく。だから、期待しちゃだめ。兄は…………いや、この世の人間は全員敵だ。



今日もまた、暗闇に堕ちていく。

拒みたいのに拒めなくて、流したくもない涙も流れる。

胸の奥から何かがこみあげてきて、それを制御しきれない。

さらに奥へ、奥へと進むたび、黒は濃くなる。










───────もう、光なんて見たくない