麗しの狂者たち【改稿版】

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あれから、私は授業に三十分以上も遅刻してしまった。

当然その後担任教師から呼び出しをくらい、一先ず急な体調不良だと伝えたら、普段の行いが功を成したのか、あっさりと信じてくれた。

それからは特にお咎めもなく、クラスメート達からも心配されたので、何とか一安心だけど、良心が激しく痛む。

しかも、副会長としてあるまじき行為をしてしまい、これでは他の生徒達にも示しがつかないと。
今更ながらに多大なる罪悪感が押し寄せてきて肩が自然と落ちる。

一方、八神君は元からサボるつもりだったそうで、あれから教室とは正反対の方向へ行ってしまった。

私はたった三十分授業に行かなかっただけで心臓が飛び出してしまいそうな程焦ったのに、八神君は何故あんなにも平然としていられるのだろう。

不良生徒とはそういうものなのかもしれないけど、私には到底理解出来ないし、 理解しようとも思わない。

というか、本当に彼とはもう金輪際関わりたくない。

今思い返しても己の不貞行為に涙が出そうになるし、彼の前では成す術がないことがよく分かった。


それに……。


“操り人形”

八神君に言われたその単語が、あれからずっと頭にこびり付いて離れない。

相変わらず失礼極まりない言動ではあるけど、間違ってはいないから。


これまで私は亜陽君の許嫁とし育てられ、何もかも彼を中心に選択されてきた。

だから、自分自身が何をしたくて、何が好きなのかよく分からないし、亜陽君のお嫁さんになる事以外夢はない。

ずっと亜陽君が好きで、彼に釣り合うよう必死に努力してここまで来たけど、気付けば主体性というものは遠い昔に無くしてしまった。


それを八神君は見抜いている。

そして、その調和を乱そうとしている。

何故そこまで私に拘るのか分からないけど、彼の前だと植え付けられた熱がまた再燃しそうで、出来る事なら顔も見たくない。

私はこれ以上亜陽君を裏切ってはいけないのに。


そう心に強く語り掛けながら、私は思い足取りで生徒会室へと向かう。

社交パーティープロジェクトが始動してからは、これからほぼ毎日会議がある為、亜陽君を避ける事は出来ない。

まさか、二度も後ろめたい気持ちになるなんて、我ながら信じ難い話だけど、後悔先に立たずというだけに。

兎に角、彼に勘付かれないよう平常心を保たなければと私は自分に何度も言い聞かせる。