激しい動きをしてしまったため、エコバッグの中のアイスクリームがぐちゃぐちゃになってしまっていないかと不安になった。

先週に引き続き今週も私の幸せを奪われたのではたまったもんじゃない。

無事に男どもをやっつけ、帰ろうとしたその時、、、

「お、おいっ!!」

またもや私の前にサングラスをかけた1人の男が立ちはだかった。芸能人気取りだろうか?

見るからに怪しそうな彼を、私は不機嫌なのを隠しもせずに見つめた。

「、、、何ですか?早く帰りたいんですけど」

そうでないと、アイスが溶けてしまう。

「俺だよ、俺!」

巷で話題のオレオレ詐欺だろうか。
私はそんなのに引っかかるほど歳を取ってはいないはずなのに。
それほど老け顔だっただろうかと思わず頬に手を当てる。

「いや、誰ですか」

ため息をつき、サングラス越しにじとりと彼の目を見た。

「なんでわかんねえんだよ!」

そう怒鳴った彼は、おもむろにサングラスを外した。
不覚にもかっこいい人だ。と心の奥底で思う。
だが、見知らぬ顔だ。

「え、誰、、、?」

思わずそう呟いた私を、何故か彼が凝視する。

「は?!これでも気付かないだと、、、?有り得ねえ!」

何やら1人で喚き出した男を横目に私は、帰ってもいいだろうかと音を立てずに歩き出した。

しかし数歩も行かないうちに、彼に腕を取られて引き止められる。

「なに勝手に帰ろうとしてんだよ!俺のこと本当に覚えてないのか、、、!?」

訴えるような彼の視線に、さすがの私も居心地が悪くなった。
はっきりと面識がある人を忘れるほど私は薄情者だっただろうか。

「いや、あの本当に覚えてないんです、、、。何かヒントはないんですか?」

「ヒントだと!? そんなに知りたいなら教えてやるよ」

そんなに知りたくない。という言葉はぐっと我慢し、静かに彼の声を聞く。

「先週、狭い道でお前にぶつかった男だよ。ここまで言えばわかるだろ!?」

「、、、ああ!!あの、非常識男!!」

少し記憶を遡った後、私は大きな声を上げた。