《湊side》

計画は完璧のはずだった。

知らない男2人に絡まれたあの女_如月 紬を颯爽と助け、顔や地位だけでなく人間性も優れていると再確認させて俺に惚れさせる、、、。

まったく非の打ち所がない、俺考案の策略だ。

これであの女もすぐに俺の虜になるだろうと思っていた。

なのに、、、

「せいやぁぁぁぁ!!」

どうなっているのだろう。如月 紬は男2人を相手に怯むことなく、しかも1人のみぞおちを肘で殴って見せたのだ。

近くに停めたリムジンの中で彼女を助けに行くタイミングを図っていた俺は、呆気に取られてただその様子を眺めていた。

「どるあぁぁぁぁぁ!!!」

彼女が2人目の急所に蹴りを入れ、何やら決め台詞を言っているところでようやく俺の意識が戻った。

「本当にあいつ何者だよ、、、いや、こんなこと考えてる場合じゃない。早く引き止めに行かねえと、、」

さっさと帰ろうとしている彼女を引き止めるべく、急いでリムジンから降りる。

「お、おいっ!!」

前回のように知らない女に声をかけられないようにサングラスを掛けて彼女の前に立ち、声をかける。

俺と2回も話せる女なんてそうそういない。
きっと喜びに満ちた顔で俺のことを見上げるのだろうと思っていた。

しかし

「、、、何ですか?早く帰りたいんですけど」

彼女は喜びどころか、不快感満載の顔を隠そうともせずに俺を睨んだ。

そこからあとのことは思い出したくもない。

あいつは俺のことを記憶の片隅に追いやっており、先週のことをほとんど忘れていた。

その上この俺を非常識男呼ばわりまでして、散々侮辱した挙句さっさと俺の元を去ってしまったのだ。

暫くその状況を飲み込めず、呆然と立ちすくめていたが、あわててあの女の元を追いかける。

しかし、その背中から感じる「絶対に邪魔するな」というオーラに圧倒されてしまい、結局何もできず、俺はリムジンに戻ろうと決意した。