人というのは誰かを失った瞬間に
新しいご縁に恵まれるのかもしれない
と思いつつこのご縁は本当に必要なご縁なのかと疑いたくなるものだ。

本当に神様がいるのならば
なぜですかと問いたくなる。

雪は桜に別れを告げてから
なぜか石川由香里との接点が増えた。

そして、衝撃的な出来事が起きる。
お昼休みにクラスメイトたちがいるというのに
由香里は雪のネクタイを引っ張って
キスをしたのだ。

彼氏と別れたばかりで
人恋しくなっていたという。
確かに別れたのを補うのに誰かに
寄り添いたくなるのもわかるが、
中学時代にいじめていた
雪をキスの相手として選ぶのは
いかがなものか。

雪は学校を帰宅した今でも
その時の状況が信じられない。

昼休みの後、教室にいられなくなって保健室に行って、隣のクラスの亮輔に頼んで教室から荷物を取りに行ってもらった。
誰にも本当の事情は説明できなかったが、
具合悪いことを理由に早退した。

また学校に行けなくなった。
石川由香里の考えていることがわからない。

いじめていた自分に
なぜそういう行動をとるのか。


雪は、具合悪いことを理由に
1週間学校を休んだ。


ふとんの中で、こんなことになるんなら
ずっと桜と別れないで付き合っていれば
よかったと後悔する。

雪が欠席の教室では石川由香里と齋藤芽衣子が雪の席を見て話していた。

「ねぇ、由香里。
雪ちゃん休みなのは、
由香里が原因なんじゃないの?
いきなりキスしたから。」

「え?だって、深いのはしてないよ?」

「いや、そういうことじゃないだろ。
好きでもなんでもないのにいきなりキスは
男子でも受け入れられないって。」

「えー嫌いなわけじゃないのに…。」

「ん?」

「え?」

「まさか、由香里、
雪ちゃんに本気なってきた?」

「本気って……。」

静かな昼休み、後ろの方で静かにお弁当を食べていた瑞希ががたがたと机の音を鳴らして、
由香里たちの近くに移動した。

「あのさ、雪に本気じゃないなら
近づかないでもらえるかな。」

「な、なんで、あんたに
そんなこと言われなくちゃいけないのよ。」

「え、えっと、元カノだったから。
雪は、繊細で傷つきやすいから
やめてほしいってこと。」

「元カノがそんなしゃしゃり
出ないでくれないかな。
私と雪ちゃんの問題でしょう。
まだどうするか伝えてもないのに
人の話、聞くんじゃないよ!!」

「教室内でそんな大きな声で話してたら、
聞きたくなくても聞こえてくるよ!
話すなら別なところで話してよ。」

「はいはいはい。
雪ちゃんの元カノさん!!
すいませんでしたぁ!!
芽衣子、行こう。」

「あ、うん。わかった。」

芽衣子は机に置いていたコンビニの袋を持って、
教室を出る由香里に着いて行った。


鼻息を荒くして、深呼吸をする瑞希。
近くにいた菊地雄哉が声をかける。

「お疲れさん。」

「あ、うん。ごめん。
大きな声出した。」

「俺にもあいつの行動には理解できない。
雪のことをあんなに毛嫌いしていたはず
なんだけどな。」

「知ってるよ。
菊地くんと石川さんが原因で
雪が中学時代いろいろあったって。」

「…あぁ。まぁ、そんなこともあったね。
あいつ、雪はいじりがいあるから。」

「菊地くんも!! やめてよね。
雪にちょっかいかけるの。」

「お、おう。
俺は、1年の時に足洗ったつもりだよ。
亮輔に交換条件出されたからさ。」

「え?交換条件?」

「彼女紹介する代わりに今後一切
雪に関わらないって話になってるからさ。
おかげさまで彼女とはラブラブですけど。」

「…ふーん。
何か釈然としないよね。」

「いいだろ、別に。」

不機嫌そうな顔で瑞希は自分の席に
戻っていく。

菊地は平気な顔してスマホをいじっていた。

廊下を由香里と芽衣子は歩いていく。
雪が学校にいないことに不満を覚える
由香里だった。