雪は亮輔のこと以外では
毎日順調な生活を
送っていた。
朝は桜と一緒に登校するし、
昼休みは屋上で一緒にお昼食べる。

放課後の部活終わりは決まって一緒に
帰宅する。

何の障害もなく、リア充を送っているかに
思われたが、ある日を境に、塾で忙しいと亮輔の付き合いが薄れていた。

あんなに一緒に帰ったり、カラオケに行ったり、いろんなことを相談した仲なのに、亮輔に挨拶一つ交わして話しかけても単語帳をぺらぺらとめくって、何も言わなくなる。
別な時は小さなノートに書いた
世界史の問題の答えを赤ペンで書いたところを赤いシートで消しては見てをぶつぶつ繰り返していた。かなり追い詰められているのか目の下にはクマができるくらいだ。
徹夜しているのだろうか。
尋常じゃないくらいに熱中している。

結局、話しかけるのを諦める。

「雪、どうかした?」

屋上のベンチでコンビニで買った
たまごサラダサンドイッチを頬張った。

「ん?」

桜は鳥照り焼きのパスタサラダを
プラスチックのフォークで食べていた。

「何か、ぼーっとすること多いよね。」

「そ、そうかな。」

「亮輔くんのことかな。」

「あー、分かっちゃう?」

「最近、長く一緒にいるから
 勘づいてきたよ。
 まだわからないことの方が多いけど。」

「わからないままの方よくない?」

「なんで?」

「謎解きはさ、ゆっくり解いた方が
 楽しいでしょう。」

 食べ終わったサンドイッチのフィルムを
 ビニール袋に入れて、チルドカップの
 カフェラテにストローを刺して飲んだ。
 想像より甘かった。
 桜はほうじ茶のペットボトルを飲んだ。

「…それよりさ、桜に見せたいものあって、
 家来てみない?
 いつも、帰りに桜の家に送ってるし、
 俺の家に来る機会ないじゃない?
 どうかなぁって思って。」

「それは、切り替えたってことで
 いいのかなぁ。
 まぁ、確かに雪の家に行ってないよね。
 私の家何度も来たことあるけど、
 部屋とか中に入ったことないしね。」

「…瑞希いるし。
 何か、入りづらいもんね。」

「あー、そうだよね。
 ごめんね、
 瑞希は邪魔はしないと思うんだけど。」

「え、邪魔って何の邪魔するの?」

「……分かってるくせに。」

 雪はニヤニヤと笑ってカフェラテを
 飲み切った。
 桜はぐーっと拳で雪の背中を押した。
 一緒にいたいのになかなか2人きりに
 なれる場所がないことに悲しかった。
 雪はそのふれあいに嬉しかった。


 ふわっと風が吹いた。
 屋上のカザミドリが
 カタカタとなっていた。

 昼休みが終わるチャイムが鳴り始めた。