遅刻確定である朝の時間。
教室ではすでにHRが始まっていた。

平然とした顔で、
後ろの出入り口から2人は
静かに教室に入った。

「なんだ、なんだ?珍しい組み合わせだな。
 堂々と遅刻だけども…。まあ、いいや。
 漆島と綾瀬ね。すぐに席座って。」

 担当の先生は、
 特に強く指摘することもなく
 さっぱりとした対応だった。
 雪はホッと一息ついて、
 桜は次の授業の教科書を出して
 気持ちを落ち着かせていた。

 隣にいた菊地雄哉は
 特に気にする素ぶりも見せず
 いつも通り、教壇に立つ担任を見ていた。


 雪や桜のことは見向きもしない。
 

 もしかしたら、想像以上に
 考えすぎていたのかもしれない。

 雪は右手で左肩をぽりぽりとかき、
 何だか考えすぎていた自分は
 おかしかったかなと改めた。

 外の空を見ると青空が広がっていた。
 心が晴れやかになった。

 桜もほっと安心して、教科書を出して
 授業の準備をした。



****

 その頃の亮輔は、ベッドの上、
 額に熱さまシートをつけて
 体温計を脇に挟んでくしゃみを
 連発していた。

「ちくしょー。
 誰か俺の噂してんのかな。」
 
 鼻水がずるずると流れていた。
 ティッシュを鼻にあてて
 ずずーと拭った。
 ベッドからゴミ箱に
 ぽいっと入れようとしたが、
 入らなかった。

「今日は全然ついてないな。」

 ゴミ箱に入れて直して、
 またふとんを頭からかけて横になった。

 トラックが近所を走っていた。
 ガタガタと振動が響いている。