登校してすぐ亮輔は、昇降口近くの
ラウンジで雪を待った。

ざわざわと学校の生徒たちが
行き交っていた。

平然とした顔で亮輔の前を通り過ぎようと
するが、腕を引っ張って引き寄せた。

「お、おい!
 びっくりするだろ。」

「よ!雪。
 今朝は元気か。」

 亮輔が、雪の顔目の前で手を振った。

「え、あぁ、別に普通だけど。」

 雪は、バックを背負い直した。

「あのさ、話したいことあんだけどいい?」

 亮輔は、自販機で2本ペットボトルの
 コーラを買った。

「え、なに、それおごってくれるの?」

「ああ、おごるから、ほら、ついてきて。」

「え、どこに。
 ここでも良くない?
 そっちの体育館裏って
 俺、亮輔に愛の告白でもされるの?」

「あ、それもいいな。」

「どういうことだよ。」

 雪は、冗談のつもりだったが、
 亮輔の目が本気に見えた。

 2人は、朝の騒がしい中、
 体育館裏の方へ進む。

「んで、なんの話なわけ。
 まさか、本当に告白じゃないよな。」

「ああ、ある意味、愛の告白だ。」

「げ、まじかよ。」

「あのな、聞いて欲しいんだけど、 
 俺、雪に桜と付き合ってるって
 言っただろ?」

「ああ、聞いたよ。
 昨日も2人を見せびらかせられて
 困ってるんだ。毎回。
 離れたいの一心だよ。」

「それ、それの話。」

「どれ、どの話。」

「俺、桜と付き合ってるって嘘ついたの。」

「え、は?嘘。
 なんで?」

「それには深いわけがあって。
 菊地雄哉いるだろ。」

「あ、ああ、菊地ね。
 そいつが?」

「そう、そいつが、
 雪が桜と付き合うのを見るのは
 気に食わないっていうのさ。」

「うん、それで?」

「だから、俺がカモフラージュのために
 付き合ってるって嘘の情報を流したら、
 菊地がおとなしくなったんだよ。
 桜にも雪も眼中になし。」

「あー、そういうこと。
 いじめの助長になってたわけって、
 まだ起こってないけど、
 起きる可能性を未然に防いだってこと?」

「そう、ご名答。」

「菊地な、中学の時から
 腹たつけど、
 今回も俺に目の敵にしてくるんだよな。
 満足にデートもできないだろ。」

「だろ?
 だから、3人で行動すればいいって。」

「あ、でも待って確認したいことがある。」

「え、うん。どうぞ。」

「桜は、本当のところどう思ってるわけ。」

「桜?
 だから、俺も桜も全面的に菊地から
 守りたいって思ってる。」

「そこじゃなくて、
 俺に対する好意は?」

「え?うーん、そうだな。
 はっきり聞いたわけではないけど、 
 俺を彼氏にするのは無理って
 ごっこだからできるって玉砕だけどな。」

「亮輔は対象外ってこと。
 俺は、どう思ってるんかな。
 瑞希と付き合ってるって思ってるかな。」


「あ、それは大丈夫。
 瑞希が他の男子連れてきたって話を
 聞いたから。」

「あ、いつの間に…
 そんな急展開してたのね。」

 チャイムが鳴り始めた。


「あ、やばい。
 遅刻しちゃうぞ。
 教室急ごう。」

「桜の件は直接聞いてみろって。
 学校じゃなく、ラインとかで確認取れば
 いいだろ。」

「ああ、そっか。
 わかった。今日の夜にでも聞くわ。」

 雪はなんとなく亮輔の話を聞いて、
 気持ちが落ち着いた。
 亮輔は裏切り者じゃないことがわかって
 かなり嬉しかった。

 教室では担任の先生が
 HRを始めようとしていた。