運命的な再会を果たし、紆余曲折あったが、お互いの気持ちを確かめ合い、
付き合い始めて順調な颯真君との交際。
そして、深まる遥、海斗君との深く固い友情。

よしよし!
全てが順風満帆!
……とは、簡単に行かない。

何故なら、最大の難関が残っていたから。

敵?は身内に居た。

そう、娘命の溺愛パパ。
私のお父さんである。

私に彼氏が出来たと聞いたら、お父さんは良い顔をしないだろう。
頭ごなしに反対はしないだろうが、
颯真君を認めて貰い、交際を許して貰う難易度は相当高い。

起こるであろう、いろいろな事態を考えた末、
私はお父さんへ、颯真君と再会した事さえ伝えてはいない。

と、いう事で交際して約1か月の節目……

颯真君とじっくり相談し、まず、うちのお母さんに颯真君を紹介する事となった。

とりあえずお父さん説得への第一歩だ。

最初から、遥とともにお母さんは、私の味方。

既に颯真君と奇跡の再会を果たし、交際を開始した事は伝えてある。
それだけじゃなく、女子の先輩として、
遥とともに、恋の貴重なアドバイスも多々して貰った。

クラスの女子たちと折り合い、上手く行き過ぎるくらい上手く行ったと報告したら、
すっごく喜んでいた。

海斗君の部活が休みの日。

放課後、以前作戦会議を行った、隣町のハンバーガーショップにて話す事に。

私と颯真君は、遥と海斗君を誘い、お茶を飲みながら、そのむねを伝えたら……

こういう相談を受けるのは想定内!とばかりに、笑顔の遥が「はた!」と手を叩く。

「ねえねえ! 颯真君を彩乃ママへ紹介する時、私と海斗も一緒の方が良いよ、絶対! 後日、健太パパへ紹介する時は尚更(なおさら)だね!」

と、提案して来た。

そして、

「クラス女子たちと折り合いをつけたのと同様、しっかりと作戦を練った方が良いよ! 健太パパは、今回の件では一番の強敵、ゲームで言えばラスボスだからさ」

遥ったら、今回の件で一番の強敵がお父さんって……まあ、確かにそうだ。
ラスボスというのも否定しない。

それに、もしも6歳の頃の話が蒸し返され、行き違い等があり……

「おい、凜! なぜ、もっと早く言わない! 10年前、颯真君に助けて貰ったお礼を、先様に言わないといけないじゃないか。俺は大恥をかいたぞ!」

などと、私は勿論、
お母さんまで、お父さんから責められる可能性がある。

そんな事、絶対に起こってはならない。
避けなくてはいけなかった。

だから、ウチのクラスへ転入して来た颯真君が6歳の時、
私を助けたのが、ほんの少し前に判明したばかり……
お父さんには、そう伝えるつもり。

同じ理由で、颯真君も自分の両親に、私との再会、交際開始を伝えてはいない。

だってだって!
「ウチの両親が、すぐお礼に来ない」のを、
颯真君のご両親に「失礼な家族だな」と思われたくないもの。

そこらへんの事情を、颯真君も大いに同意し、私に気をつかってくれたのだ。

「ややこしいよね! 親同士の付き合いも大変だよ。子供がさりげなく気をつかわなきゃ」

遥は、腕組みをしてしかめっ面。

そんな遥の傍らで、海斗君が「うんうん」と納得し、頷いていた。

恋愛の先輩のふたりは、親がらみで、いろいろ経験しているようだ。

という事で、今回の件をクリアしたら、私は改めて両親を連れ、颯真君のお宅へ、
10年前のお礼へ伺うつもり!

ふたりが交際する報告も兼ねてね!

という事で、4人でいろいろ話をして、全員が了解。

遥と海斗君カップルの双方の両親対策、経験談も、ふたりからたっぷり聞き、
今後の作戦に活かす事となった。

本当にありがたい!
私も颯真君も、遥と海斗君には大感謝だ!

そんなこんなで、作戦会議が終わり、お店を出て、
私はスマホを使い、自宅へ電話。
訪問の趣旨を話し、お母さんのスケジュールを聞き、OKを取った。

こうして、海斗君の部活が次の休みの、平日の放課後に……

私は颯真君、遥、海斗君の3人を引き連れ、お母さんに会う事となったのである。