私がした『ある決意』
それは今度こそ、恋愛に対して、『本気』になる事。

えええ?
恋愛に本気になるなんて、 
何それ? とか、 おかしくない? とか、
普通の人からすれば、思いっきり、首を傾げられるかもしれない。

もしくは、何かっこつけてるのとか、怒られそう。

でも……
私は本当に、本気で、好きな相手が居なかった……もの。

10年ぶりに、助けて貰った颯真君(そうまくん)に再会したばかりで、
びっくりしている私。

でもさ、貴女、本当に颯真君が好きなの?
って、聞かれたら、はっきりと分からない……

思い出を美化しすぎているんじゃないのとか、言われたら、
違うとは言い切れない。

でもでも!
6歳の時、颯真君に助けて貰い、ただただ、ず~っとお礼を言いたかった。
そうじゃないと、けじめがつかない。
私は前に踏み出せない、そんな気がしていた。

それがや~っと叶った。

あの時は、いろいろ話が出来なかったけど……
颯真君はすぐに行ってしまったけれど……

今度は、私のすぐ隣の席に居る!

そして10年経って颯真君は、
とても素敵なさわやかイケメン男子になっていたから。

奥手で口下手、男子が苦手な私でも、初恋の相手で、きさくな颯真君なら大丈夫。
い~っぱい話をして、彼の事をもっとよく知り、大事にして来た自分の気持ちを確かめたい!

そこまですれば、もしも、恋が叶わずとも、きっぱりと諦めがつく。

強く強く、そう思ったのである。

その翌日……
遂に遂に、恋に本気となった私!

 ……のはずだったが、残念ながら颯真君との進展はなかった。

というか、情けない事に、私は全く何も出来なかったんだ。

私のすぐ隣。
少し手を伸ばせば、届く場所に居る颯真君なのだが、
近いようで、すっごく遠き場所に居るって感じ。

まずは授業中……

黒板に向かった里谷先生のスキを狙い、アプローチしようとした私だが……
クラス女子95%【推定】の視線に負け、
スマホの電話番号を書いた紙を渡す事が出来なかった。
それに授業中にアプローチして、颯真君の勉強の邪魔をしたり、
ばれて、迷惑をかけたくはない。

次に休み時間……

授業が終わると、これまた女子95%が颯真君の席を取り囲み、
鋼鉄(こうてつ)に等しい城壁(じょうへき)が出来てしまい、
国交断絶(こっこうだんぜつ)のようになってしまった……

城壁を壊して、その中へ、無理やり私が突っ込むなんて不可能。

クラス95%女子の重圧をはねのけ、アクションを起こす勇気は、
へたれチキンの私にはなかった。

そんな私にやきもきしたのが、親友の(はるか)である。
遥には以前、私の初恋を話している。

ちなみに遥には、既にあつあつで、ステディーな彼氏が居て、
彼女は、颯真君を取り囲む女子95%には含まれていない。

……そんなこんなで、学校が終わっての、帰り道。

遥は、自分の事のようにいらいらして、どすどす地団太を踏んだ。

「もう! じれったい! ひとごとながら、いやんなっちゃう! (りん)ったら! 一体、何やってんのよ!」

「一体、何って、私……何も出来てない……ね」

「何も出来ていないって! ったく! 駄目じゃない! せっかく! 10年ぶりに 凜を助けてくれた颯真君と運命の再会をしたんじゃないの! 何、指くわえて見てるわけ? 颯真君、横から失礼って感じで、クラスの誰かに持ってかれちゃうよ!」

遥の剣幕に押され、私は弱々しく言葉を発する。

「う、うん……このままだと間違いなく、横から持っていかれる……かも」

「おいおい! 凜!」

「ううう……」

「何、弱気になってるの! こら! 軟弱者! しっかりせんか!」

「う! ううう……そんなに叱らないでよ。それと、こら! 軟弱者! って、どこかのアニメで聞いたセリフだよ」

「シャラップ! うっさい! ようし! 決めた!」

遥は腕組みをして言い放った。

え?
決めたって何?
どういう事?

「あの? 決めたって、何? 遥……」

「当然、恋愛! 恋に関しては大先輩の遥様が、親友、凛の為に力を貸そう! って事よ!」

驚く私は思わず聞く。

「え? 遥、本当? 私の恋愛、助けてくれるの?」

「うん! 凛の恋を大いに助けるよ! だけど!」

「え? だけど? 何?」

「凛もさ、全くの他力本願はダメ! 人に頼るばかりじゃなく、もっと勇気を持ってよ!」

「う~、ゆ、勇気を……持ってかあ」

「うん! ヘタレて引っ込み思案のままじゃ、本当にダメ! 凛は自分から動いて、もっともっとガンガン戦わなきゃ! 恋愛は気合ありきの戦いよ! 激しいバトルなんだから!」

「えええ? は、遥、恋愛は気合ありきの戦い? 激しいバトルなの?」

「その通りだよっ! 凛! ガンガン行こうぜ! ファイトっ!!」

おいおい!

ガンガン行こうって……これまた、どこかのゲームみたいな、合言葉だ。

戸惑う私へ、(げき)を飛ばす親友・遥の目は、
「ごうごう!」と熱血漫画のように燃えていたのである。