「告白するよ! 凛ちゃん! いや、山脇凛さん! 俺、岡林颯真(おかばやし・そうま)は君が好きだ! いや、大好きなんだ! 付き合って……ぜひ! 交際してくれないか?」

私の素直な気持ちを伝えたら、颯真君から、そう告白された。

やったあ!!
遂に遂に!!
10年越しとなった私の初恋は実ったのだ!!

嬉しい!!
本当に嬉しい!!
おおげさだと言われそうだけど、ここまで生きて来て一番嬉しいかも!!

私の目にはまたも、大粒の涙があふれ……

それを見て、嬉しそうに?にこにこした颯真君に言われてしまう。

「ははは、凛ちゃんは本当に泣き虫だなあ」

「うふふ、そうよね? でも今度はうれし泣き……かな」

「うれし泣き? そうか!」

「うん! でも泣いてばかりじゃ、ダメだよね。もう少し強い女子に、私はなる!」

きりっと、決め台詞(ゼリフ)を言ったつもりなのに、更に颯真君に笑われてしまう。

「あはははは、私はなる! って何だ、それ? 凜ちゃんは、どこかのマンガの主人公かよ?」

颯真君の笑顔と笑い声に釣られ、つい私も笑ってしまう。

「あははははは、だよね、自分で言っておいて、おっかし~」 

お互いに告白し、正式に付き合う事となっても、
まだまだ一緒に居たく、別れがたくて……

なんやかんやで……
すっかり颯真君と話し込んでしまった。

かと言って、特別な話題などなく、他愛もない会話が多かった。

「びっくりしたよ。颯真君は、バスケットボール、上手だね」

と、私が(たず)ねたら、

バスケットボールは、この街から引っ越して、小中と、しばらくやっていたそうだ。
そこそこ才能があって、中学校ではレギュラーだったそうだ。
A市の高校入学後、すぐに引っ越しの話となったので、
あちらの高校では入部しなかったという。

「いや、今日はもやもやしててさ、無心にシュートしたい気分だった」

「だよねえ」

「でも、バスケやりに公園へ来て良かった! 偶然にも凜ちゃんと会えて、お互いの気持ちも確かめ合う事が出来たから! 本当に雨降って地固まるだな!」

と、颯真君は屈託なく笑っていた。

そんなこんなで、気が付けば……
もう太陽が沈み、辺りには、夕闇(ゆうやみ)が迫っていた。

慌てて腕時計を見たら、午後5時30分過ぎとなっている。

「うわ! 颯真君! すっかり話し込んじゃった! もう5時半だよ! 私、早く帰らないと!」

「おお、そうか!」

「うん! いつもより帰りが遅いから、お母さん気にしているかも」

「ああ、じゃあ帰ろう! 俺が凜ちゃんの家まで送って行くよ!」

「あ、ありがとう!」

という事で、ふたりで、座っていたベンチから、慌てて立ち上がった。

ここで、私は勇気を出す。

「颯真君!」

「ん?」

「あ、あの……10年前のショッピングモールみたいに、手をつないで、歩いてくれる?」

「ああ、良いよ! お安い御用さ!」

颯真君は快くOKし、手を伸ばして来た。

対して、私は勢い良く手を伸ばし、しっかりと颯真君の手を握った。

ああ! 
温かい!

颯真君の手の大きさは、変わってしまったけれど……
この手のぬくもりは……全く同じだ!!

私の記憶、そして手自体も、しっかりと(おぼ)えていたんだ!

すっごく感動!
気持ちが弾む!
心が躍る!

そんなうきうき気分の私へ、颯真君は問う。

「ところで、凛ちゃんの家はこの近くかい?」

「うん、近いよ。……この公園から歩いてすぐのマンション……颯真君の家はどこ?」

「ああ、俺の家も、近いよ。ここから歩いて、3分くらいの賃貸マンションさ」

「あは! じゃあ、ご近所さん……みたいなものだね!」

「そうだな! ご近所さんだ。今まで離れていた距離を考えたらな」

「うん、転入して来た時、A市だって聞いてびっくりした。すっごく遠いものね」

A市は、私達が住むこの街から電車で8時間以上かかる。

「ああ、引っ越して凜ちゃんには二度と逢えない。子供の頃の素敵な思い出として、大事に胸にしまっておこうと思っていたんだ」

「でも、颯真君。私たちはまた逢えたんだよ! そして今日も助けて貰って、い~っぱい話が出来て……」

「そして、お互いの、10年間温めていた本当の気持ちに気付いて、付き合う事になった……」

「私達の出会いと再会って、そして付き合う事になったのは、不思議……だよね?」

「ああ、不思議だ! 互いの行動が少しでも違っていたら、こうはならなかった! 本当に素敵だ!」

「うん! とっても素敵!」

と、話に花を咲かせながら、道案内し、
颯真君は私のマンションの1階まで送ってくれた。

「……じゃあ、颯真君、後で必ず電話するね! 絶対メールも送る!」

「ああ、凜ちゃん、待ってる! それに俺からも電話をするし、メールも送るよ!」

とふたりで固く固く約束し、名残惜しくも、バイバイしたのである。