公園で、二度も大泣きした私……

誰かが傍から見れば、颯真君が何か酷い事をして、
私を泣かせたと誤解されるかもしれない。

ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!

ひたすら、ひたすら、謝った……

対して、颯真君。

「いやいや、俺が変な事を言ったから悪いんだよ。これって……嫉妬かもしれない。でも凛ちゃんの本当の気持ちが、本音が聞けて良かった」

と、優しく言ってくれた。

「うう、本当にごめんなさい。私って相当めんどくさいし、とても重たい女子だよね……」

でも颯真君、

「そんな事ない。それと、やっぱり、凛ちゃんは変わっていない、ホッとしたよ」

と笑顔だった。

笑顔の颯真君を見て、良かった!と思う。
本当に安堵した!

そして、今の号泣で自分の気持ちが改めて分かった。

私を6歳の時、助けてくれた岡林颯真(おかばやし・そうま)君。
彼は私の初恋の相手。
そして、私は10年間、彼への想いを大切にしていたんだって。

でも……かんじんの颯真君の気持ちは?
私の事をどう思っているんだろう?

「颯真君」

「ん?」

「私、自分の気持ちが分かった。実は……」

と、言い……今までの事を改めて、正直に話した。

これまで付き合った人は居ない事。
というか、好きになる男子が居なかった事。
10年間、温めて来た自分の気持ちを確かめる為に、颯真君と話をしたかった事。
颯真君に振り返って貰えるよう、相応(ふさわ)しい女子になりたいと、
『自分磨き』をしていた事。

「……そうだったんだ」

「うん、颯真君、クラスではいつも女子達に囲まれていたじゃない。話しかける勇気がなかったのは私の方なの……」

「………………」

「元々、自分に自信がなかったし、強引に彼女達へ割り込んで、颯真君へ話しかける勇気もなかったし……電話番号もメルアドも聞けなかった。聞ける雰囲気じゃなかった……」

「………………」

「授業中は、勉強の邪魔しちゃ絶対にダメだと思ってたし……」

「………………何だ、そうだったんだ」

「うん……」

「実は俺も、これまで付き合った人は居ない。彼女居ない歴16年さ」

「そう、なの?」

「ああ、多分俺も凜ちゃんとの思い出が、心のどこかに引っかかっていたんだろうな」

「颯真君……」

「凜ちゃん、正直に言うよ。小、中と、男女混合グループで出かける付き合いの女子の友達は居たけれど、ふたりきりでとか、恋人になりたいとは思わなかった」

「そっか。私も……そうかな」

「じゃあ、似たもの同士じゃないか、俺達は、あはははは」

ああ、颯真君が笑ってくれた。
そして、

「でも、これから凜ちゃんといっぱい話せたり、やりとりが出来るよな。電話番号もメルアドも、お互いに知っているから」

と、言ってくれた。

うん!
確かに……そうだ。

でも、私はまだ颯真君の本当の気持ちを教えて貰ってはいない。

今、私は凄く幸せ!
でも、一歩踏み込んで、颯真君の本当の気持ちを確かめる事で、状況が一転。

今の幸せを失ってしまう可能性もある……

しかし、私は勇気を出す事に決めた。
遥のポリシー、彼女の言葉が私を後押ししてくれる。

「自分が置かれた状況下で、可能な範囲内において、ベストを尽くせば良い!」

そう!
この状況で、可能な範囲内において、ベストを尽くせ!

だから、私は颯真君へ(たず)ねる。

「颯真君」

「ん?」

「今更だけど、言うね。私は颯真君が好き。でも颯真君は、私の事、どう思ってるの?」

ああ!
言ってしまった!

果たして、颯真君はどう言葉を戻してくれるのか?

私は緊張しながら、颯真君の言葉を待った。

私は、自分の気持ちを正直に伝えた。
颯真君を好きだと告白した。

果たして颯真君は……

「凛ちゃん」

「は、はいっ!」

「今、君と話していて分かった」

「分かった?」

「うん、俺の気持ちがね」

「颯真君の気持ち……」

「ああ! ごめん! 先に言わせてしまって。本当は俺から先に言うべきだったけど、はっきり言うよ」

「は、はい」

「俺、岡林颯真は、心から山脇凛ちゃんが好きなんだ」

「颯真君!」

「今日、相原が来て、凛ちゃんに迫った時、俺は迷いもなく飛び出した。あんな奴に凛ちゃんを取られたくない! 心の底から、そう思った!」

「颯真君……」

「俺、海斗君にも嫉妬していた。クラスの女子から彼は遥ちゃんの彼氏だって聞いていたのに……」

「………………」

「凛ちゃん本人から、海斗君は遥ちゃんの彼氏だと、そして凛ちゃんが海斗君とは仲が良い友達だと聞いて、凄く安心したんだ」

「………………」

「さっき話したけど……」

「………………」

「俺、この街に……生まれ育った故郷へ帰るのを本当に楽しみにしていた」

「………………」

「凜ちゃんに再び会えるかもとわくわくし、大好きだった街並みを見れると思っていた」

「………………」

「でも……故郷は……この街は変わってしまった。この10年で、俺の想い出は……ほとんど消え失せてしまった」

「………………」

「でも…………」

「………………」

「故郷に思い出は、たったひとつだけ残っていた……凛ちゃんだけは変わっていなかったんだ」

「………………」

ここで、颯真君は笑顔のまま、首をゆっくりと横へ振った。

「いや、凛ちゃんは変わったな。でも……素敵に可愛く変わってくれた」

「………………」

「そして、10年間、俺を待っていてくれた」

「………………」

(ふる)い想い出は美化されると、誰もが言う。俺もそうかなと思っていたよ。でも違ったな……」

「………………」

「10年ぶりに再会した凛ちゃんは、泣き虫なのは全く変わらないけれど……俺を想って泣いてくれる優しくて素敵な女の子になって待っていてくれたんだ」

「………………」

「やはりこの街は、俺が帰るべき街……凛ちゃんが待つ素敵な故郷だった」

「………………」

「凛ちゃんと話しているとホッとする。俺はこの街へ、故郷へ帰って来て良かった。凛ちゃんと再会出来て、本当に良かったと心から思うよ」

「………………」

「さっきも言ったけど、俺は自分の気持ちに改めて気付いた。素直になる!」

「………………」

「告白するよ! 凛ちゃん! いや、山脇凛さん! 俺、岡林颯真は君が好きだ! いや、大好きなんだ! 付き合って……ぜひ交際してくれないか?」

あ、ああああ……

颯真君……ありがとう!

私、貴方を待っていて良かった!
本当に良かった!!

あんなに大泣きしたのに……
私の目にはまたも……
大粒の涙があふれていたのである。