親友の(はるか)、遥のステディーな彼氏、海斗君のふたりと、
3人で楽しくわいわい冗談を言いながらランチをしていた私、(りん)

何も知らない人が(はた)から見れば、
こういうのって、どう見えるんだろう?

海斗君のハーレム状態?

そこへクラス95%女子プラス強引参加の男子とともに現れた颯真(そうま)君。

ランチを楽しむ私の事を「じ~いっ」と見ていた。

うわ!
視線を感じる!

間違いない!
うぬぼれとかじゃない。
颯真君、わ、私の方をず~っと見てる。

だから、私も視線を走らせ、じっと颯真君を見た。
あいさつをしたせいか、そんな事も自然に出来た。

少し離れていたから、颯真君の表情までは分からない。
だけど、なんとなく、『つまんなそうな雰囲気』を感じた。

無言で、しばらく私を見ていた颯真君。

取り巻くクラス女子たちから促され、私から視線を外し、券売機へ。
パネルを見た後、お金を入れていた。

どうやら、食券を買っているようだ。

そんな颯真君の姿を見ていたら、

さりげなく遥と海斗君もチェックを入れていた。

「ねえ、海斗。今、食券買ってる彼が……例の颯真君よ」

海斗君は、数多の女子に囲まれた颯真君を見て、素直に驚いていた。

「うわ、彼が颯真君かい? 本当に凄いな、周りが女子だらけだ」

すかさず遥が言う。

「だからあ、昔のモテモテ海斗と同じだって、言ったじゃない」

「いやあ、俺はあそこまで凄くなかったよ。でも……彼、(りん)ちゃんの事、ず~っと見ていたな。もしかして、俺が一緒で彼に誤解されないか?」

勘の良い海斗君。
迷子事件の経緯(いきさつ)と、今回の再会も聞いたから、
なんとなくピン!と来たようだ。

「大丈夫だよ、海斗! 取り巻き女子たちがしっかりと説明してくれるでしょ」

遥のアシストに頷く海斗君。

「ああ、そうだな。彼女たちから、ご注進があるか、俺は遥の彼氏だって、……じゃあ、大丈夫だな」

ここで、遥から提案。

「ねえねえ! ふたりとも! 今の時間だったら、まだ屋上が空いてるよ。今日はさ天気もピーカンだし、屋上へ行こうよ!」

わお!
それ大賛成!

ずっとここで颯真君を見ているわけにもいかないし、
後から来る生徒たちの為に、席を空けるのがマナーだもの。

と、いう事で、私は遥、海斗君とともに、屋上へ向かうべく、学食を出たのである。

というわけで、学食を脱出?し屋上に来た。
ウチの学校の屋上は相当広い。

昼休みを楽しむ生徒たちの姿は、(はるか)の読み通り、まだ少ない……

今日も天気は快晴。
雲ひとつない。
吹く風はさわやかで、とても気持ちがいい。

ウチの学校は大きな街にあるけれど、周囲に高い建物がなく、
屋上からの眺めはとても絶景。

これは昔から変わらないらしい。

卒業した女子の先輩からも聞いてるし。

特に今日みたいな日は最高だ。

頭上を見れば、一面、真っ青な大空。
遠くを見れば、美しい山並み。
大パノラマという趣きがある。

私は、屋上から見えるこの風景が、学校の中で一番好きだ。

きっと、自分の青春はって、振り返る時には、
必ず脳裏に浮かぶに違いない。

その時、私はどんな大人になっているのだろう?

将来どうなるのか、全く見えないし、分からない。
けど、充実した青春時代を過ごし、素敵な大人になりたいと思う。

さてさて!
私たちは、屋上の一角に陣取り、持ち歩いてる敷物を敷いて座った。

屋上に来る事が多いので、敷物は3人全員ひとつずつ持っている。

ウチの生徒はランチを摂る際、屋上好きや校庭の芝生好きが多いから、
敷物の所持率は高いんだ。

周囲に人が居ないのを確認し、遥が言う。

「ねえ、(りん)

「なあに、遥」

「この際、海斗にもさ、……凜の応援して貰うのってどう?」

「え? 海斗君に私の応援をして貰うの?」

「うん! 私もさ、男子の気持ちが、ばっちり分かるってわけでもないし、海斗にいろいろ聞けば、颯真君へのベストな作戦も万全に立てられるじゃない」

「成る程。颯真君へのベストな作戦かあ……」

詳しく説明されなくとも、私にも遥の言わんとする事は分かる。

海斗君から、いろいろ聞いて、同じ男子である颯真君への、
ベストなアプローチ方法、対応をアドバイスして貰う。

まあ、海斗君は私の迷子事件も知ってるし、
先ほどの状況で、感づいている雰囲気もある。

だから海斗君の目の前で、堂々と私に聞いているんだよね、遥は。

うん!

遥に言われ、少し考えたけど、決めた。

海斗君は優しいし、いろいろ親身になってくれそうだ。

迷惑じゃなければ、ぜひ、お願いしたい!

そこまで、ぱぱぱ!と考え、私はOKした。

「もしも、迷惑じゃないのなら、アドバイスしてくれるのなら、ぜひに」

私のOKを聞き、遥が速攻で聞く。

「海斗」

「おう!」

「私たちの話を聞いて、なんとなく分かると思うけど、凛の応援をしてあげて」

「へえ、凛ちゃんの応援かあ」

「ええ、迷子になった凛を助けてくれた颯真君、彼が凛の初恋の相手なのよ」

「おお! 初恋……懐かしいなあ。俺もあったなあ、初恋……」

海斗君が遠い目をしたので、遥がぴしゃり。

「ごめん! 余分な回想は後にして。今は凛の初恋を(かな)える為、海斗にいろいろ聞きたいの、男子の心理とかね。出来れば、手助けもしてほしい」

私の為に、切々と訴え、海斗君にお願いしてくれる遥。
嬉しくなった私は、涙が出そうになる。

遥の言葉を聞き、海斗君はにっこり。

「おう! 任せておけ! 俺に出来る事なら、何でも協力するよ」

と、快諾してくれたのである。