ー夏海に会いたい。
夏海に会いたい。
会いたい。
ただ、それだけ・・・・・・。

俺の名前は、山村健太、37歳。俺は、地元の高校で教師になっていた。そして俺には、いつまでも忘れることが
出来ない恋人がいた。そいつは、20年前にALSという病気になり、この世を去った。17歳という
若さやった。17歳の時、同い年で幼馴染で恋人の夏海が、冬の寒い病室で息を引き取った。その時のことを今でも
鮮明に覚えている。夏海。夏海の笑顔が好きやった。

「けんちゃん」
「・・・・ん?」
俺は、17歳で時が止まったまま、37歳になった。好きやった。大好きやった。あいつの笑顔が、俺は、俺は、本気で・・・・。俺は、友達の達也とアパートで酒会&談笑をしていた。達也と会話をしていると、いつのまにか
時間が過ぎた。達也は、夏海の親友の高橋愛、高橋と結婚し、今、達也は16歳の娘・夏希がいる。
「・・・・・・・生きとったらな。」
俺は、ライターで煙草の火を付け、吸い始めた。たばこを吸い始めたん、確か20の時やったかな?・・・・本気で辛かった。夏海が死んだときのことを思い出すのが辛かった。苦しかった。夏海をずっと見ていたから。マールボロの煙草の匂いが鼻を突いた。煙の臭いが部屋の中を充満した。会いたい。でも会えない。夏海のことを忘れんといけんな。俺はいつまで、夏海のことを考えんとんやろ。忘れたい。

もう忘れたい。
もう忘れたい。
でも、俺の中で、いつまでも夏海がいる。夏海、会いたい・・・・・・。
「達也」
「ん?」
「夏海のこと、本気で好きやった・・・・。」
「そやろな」
「うん・・・・・」
すると、達也が衝撃質問をしてきた。
「けんちゃん」
「ん?」
「なっちゃんと、SEXした?」
俺は、飲んでいた水を吹き出しそうになった。
17の夏、俺は夏海と初体験をした。俺の部屋やった。夏海の身体に触れるたびに、夏海の身体が震えて、俺、夏海に何回もキスして、「好きだ、好きだ」って何回も夏海に言って、夏海の両手を握った時、俺の額の汗がそっと、夏海の頬に落ちた。蝉の鳴き声が響く8月のことで、薄暗い部屋の中で、夏海にキスして、お互い上半身裸で抱き合って、「健太、健太」って、夏海すごい感じてて、夏海に指を入れて、その時の夏海、顔が本当に真っ赤で、「恥ずかしい」って小さい声で言いよって・・・。初体験も思い出になるとはな。健太はふと達也を見た。達也はにやにやしていた。
「けんちゃん、頬真っ赤」
「あん?」
「さては、エロいこと考えよった?」
「考えとらんわボケー」
「でも、頬すげ―真っ赤(爆笑)」
達也が大爆笑し始めた。夏海との初体験の時のことを思い出していたとか、口がさけても言えない健太であった。

(END)