「白川菫花ーー!この阿婆擦れが!ふざけるな!お前は俺のモノだ。俺のモノになるんだ!」
蒼紫の下に組み敷かれた状態でいるにもかかわらず、暴れようとする桐谷だったが、騒ぎを聞きつけた警備員によって更に押さえつけられる形となった。そこに桐谷の上司である専務がやって来て、冷や汗を流していた。
「申し訳ありません。京極副社長、最近桐谷は様子がおかしくて心配していたのですが、このような騒ぎを起こすとは……本当に申し訳ありませんでした」
謝る専務の隣で警備員に引きずられるように立たされた桐谷が顔を歪めた。それは反省している態度ではなく、蒼紫から冷気のようなモノが漂って来る。
「そいつの処分はそちらにお任せします。この世から消し去ってやりたいが、無理なことは分かっているからな」
蒼紫は警備員に拘束されている桐谷に近づき、耳元で囁いた。
「この世から消せずとも、社会的な抹消のしかたは心得ているから覚悟しろよ」
顔を上げた桐谷が目を見開いた。その顔は真っ青を通り越して、白くなっていた。
「それから専務、社長に伝言をお願いします。京極グループ、京極蒼紫が覚悟しておけと言っていたと」
専務が額の汗をハンカチで拭き取りながら「ひっ」と悲鳴のような声を上げた。それから弱々しい声で「招致しました」と答えた。
桐谷と専務は警備員と共に連れて行かれ、控え室が静かになったと思われたのだが、そこにシクシクと泣く凛さんの声が聞こえてきた。それに気づいた蒼紫さんが凛さんの頭を優しく撫でた。
「凛、怖かったな。大丈夫か?」
「ひくっ……んっ……こっ……こわかったよー」
まるで子供をあやすような蒼紫さんの姿と、子供のような凛さんの姿に、菫花は違和感を覚えた。


