うつろな顔をした桐谷が、菫花の元へとゆっくりを近づいて来た。
「白川菫花、来い。お前も俺を捨てるのか?許さないぞ。知っているんだ。お前も俺を……俺を……」
桐谷さんを捨てる?
私と桐谷さんは付き合っているわけでは無い。
それなのにどういうことなのだろう。
言っている意味が分からない。
この人はどうしてしまったのだろう。
「さっさと来い!」
菫花の腕を掴もうとした桐谷の前に出た蒼紫が、ナイフを持つ手を捻り上げ床に組み敷いた。
「うぐっ……くっ……」
「貴様!たかが元上司の分際で、菫花を傷つける気か、ふざけるな!」
「くっ……、お前こそふざけるなよ。白川菫花は俺の女だ。白川ほら、こっちにおいで」
床に突っ伏した状態で、桐谷が縋るような目で見上げてきた。
未だに私がこの人に従順であると思い込んでいるのだろうか?
菫花はスッと息を吸い込むと、凜とした態度で桐谷と対峙した。
「桐谷さん先ほども言いましたが、私はあなたの元には行きません。何故なら私はあなたのモノでも、あなたの女でもないからです」
キッパリとそう告げると項垂れ動かなくなった桐谷だったが、何を思ったのか急に声を荒げ始めた。


