不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。


 *

 菫花はビクビクとしながら会社を出た。あの日、桐谷と遭遇してから5日が経っていた。その後何事も起こらず、安心していたのだがその時は突然訪れる。

「白川菫花、待っていたよ」

 桐谷はいつも私をフルネームで呼んでいた。それは高圧的で、名前を呼ばれるたびに、いつもビクビクとしていたことを思い出した。

「桐谷さん……何か用ですか?」

「君に会いに来たんだよ」

「私にですか……」

「会いたかったよ。少し話さないか?」

「私は話すことが無いので、失礼します」

 菫花は桐谷の隣を通り抜けようとしたとき、腕を掴まれた。

「俺は白川菫花と話がしたいと言っているんだ。分かるだろ?」

 ギリリと音がしそうなほど腕を強く握られ、血の気が引いていく。

 このままでは何処かに連れ込まれてしまうのでは無いだろうか?

 恐ろしさから頭が真っ白になっていると、後ろから声を掛けられた。

「菫花?」

 名前を呼ばれ菫花は真っ白になっていた頭を左右に振り、桐谷に掴まれていた腕を思いっきり振り払うと、声のした方へと駆けだした。顔を見なくても分かる。

「蒼紫さん!」