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菫花はビクビクとしながら会社を出た。あの日、桐谷と遭遇してから5日が経っていた。その後何事も起こらず、安心していたのだがその時は突然訪れる。
「白川菫花、待っていたよ」
桐谷はいつも私をフルネームで呼んでいた。それは高圧的で、名前を呼ばれるたびに、いつもビクビクとしていたことを思い出した。
「桐谷さん……何か用ですか?」
「君に会いに来たんだよ」
「私にですか……」
「会いたかったよ。少し話さないか?」
「私は話すことが無いので、失礼します」
菫花は桐谷の隣を通り抜けようとしたとき、腕を掴まれた。
「俺は白川菫花と話がしたいと言っているんだ。分かるだろ?」
ギリリと音がしそうなほど腕を強く握られ、血の気が引いていく。
このままでは何処かに連れ込まれてしまうのでは無いだろうか?
恐ろしさから頭が真っ白になっていると、後ろから声を掛けられた。
「菫花?」
名前を呼ばれ菫花は真っ白になっていた頭を左右に振り、桐谷に掴まれていた腕を思いっきり振り払うと、声のした方へと駆けだした。顔を見なくても分かる。
「蒼紫さん!」


