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関谷総合商社での事件から、蒼紫さんの甘さが更に増している。何かというと私の身体に触りたがり、側に置こうとする。その蒼紫さんの姿に、社内でも噂が飛び交っていた。
結婚も秒読みなのではないかと……。
そんな噂の絶えない社内の様子を心配した社長が、副社長室にやって来た。
「蒼紫、お前はそうやって菫花さんを困らせるなと、何度も言っているだろう」
溜め息交じりに注意を促す社長を蒼紫さんが睨みつけ、私を腕の中に囲い込むように抱きしめてきた。
「菫花を困らせるつもりは無い。でも菫花に手を出そうとした男どもには牽制をしておいたがな」
「それがやり過ぎだと言っている。何でも菫花に近づいてくる男性社員全員に、威嚇しているそうじゃないか。これでは菫花さんも仕事がやりにくいだろう」
「だって……」
「だって、じゃない。お前はいつからそんなふうになってしまったんだ」
蒼紫さんは社長に怒られ、ふてくされながら私の首に腕を回すと、コテンと頭を肩に乗せてきた。
「菫花を誰にも取られたくないんだもん」
「お前は子供か!!」
子供のように社長に怒られている蒼紫さんの頭を、私が優しく撫でると嬉しそうに微笑む蒼紫さん。
可愛いなー。
私は社長から怒らてふてくされている蒼紫さんも、可愛くて仕方が無い。
ふふふっ……。
「よしよし……良い子」
私は蒼紫さんのサラサラな髪を撫で付け、ポンポンと優しく叩いた。それを見ていた社長が、溜め息を付いた。
「菫花さん、君ももっと強く言ってやってくれ。これでは蒼紫がつけあがる。女性遊びをしなくなったと思ったら、まさかこんな問題を起こすなんて」
頭を抱え、何度も溜め息を付く社長。
私はそんな社長を見つめながら固まっていた。


