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蒼紫は会社の自室である副社長室のソファーに菫花を座らせると、ポットに紅茶の茶葉をいれ熱湯を注いだ。すると熱い湯によって茶葉が開き、室内が優しい香りで包まれる。
俺は元々コーヒー党だが、この紅茶は紅茶好きの菫花の為に取り寄せた物だ。俺は茶葉の香りが十分に引き立った紅茶をティーカップに注ぎ、菫花の前に出した。
「菫花、熱いからゆっくり飲んで」
「…………」
俯いて喋らない菫花を見て、俺は眉を寄せた。
菫花は関谷総合商社から帰って来る車の中でも、一言も喋らなかった。
「菫花……」
名前を呼んでも、ピクリとも反応しない。
感情や表情を失ってしまったかのように前を向く菫花。その姿は動かなくなってしまった人形のようだ。俺は表情を無くしてしまった菫花を優しく抱きしめた。少し前までの菫花に戻ってしまった。
俺が追い詰めたせいで感情を押し殺し、表情を無くしたあの頃の菫花のように……。


