「えっ、何……?菫花ちゃん?」
俺が菫花に手を伸ばそうとすると、その手を蒼紫が振り払った。
「菫花に触れるな」
蒼紫がそう言って菫花の体を抱き寄せ、大事そうに包み込む。そして相手を慈しむように優しく背中を撫でていた。
「菫花大丈夫だよ。大丈夫だから、ゆっくり呼吸できる?」
先ほどの低い声とは裏腹に、優しく相手を気遣うような声で話しかける蒼紫。その声が菫花の全身を包み込みうように優しく囁かれる。その甘い蒼紫の雰囲気に、回りにいた人々の喉がゴクリと鳴る。溢れんばかりの愛情を注ぎ込もうとするかのような、母性にも似た愛情を見せる蒼紫の姿に、俺は唖然とした。驚きを隠すことも出来ずに二人を凝視し、言葉を漏らす。
「おいおい、蒼紫どうしたんだよ。お前らしくないぜ」
「俺らしい?俺らしいって何?」
また蒼紫の口から、怒りに満ちた低く冷たい声が響く。
「いやだって……」
「好きで愛おしくてたまらない女が、こんな状態ならこうもなるだろう。しかも男に触れられようとしているとか、我慢できるか?それが友達であるお前でも、菫花に触れるなら許さない」
蒼紫はスッと表情を無くし低い声を放つと、口元だけを動かしこちらを睨みつけてきた。それはこの世には存在しない魔王のようで、その瞳にひと睨みされて、体が硬直した。俺はその恐ろしさから悲鳴をこぼしかけた。


