それから数日が経ったある日。
私は仕事を終え、自分のアパートへと向かっていた。
気温がが暖かくなり、歩道に咲いた春の花が嬉しそうに風に揺れている。それを横目に見ながら歩いていると、横に一台の車が止まった。
「菫花さん?」
問いかけるように名前を呼ばれて立ち止まると、そこには先日関谷総合商社で会った関谷章さんが、車の窓を開けて話しかけてきた。
「やっぱり菫花さんだ」
「えっと、関谷総合商社の関谷さん」
「そうそう。あそこの息子、章だよ」
章さんは屈託の無い笑顔を見せると、車から降りてこちらへとやって来た。
「名前、菫花さんであってるよね?」
「あっ……はい」
「ふーん」
章さんは先ほどの屈託の無い笑顔に反して、嫌な視線がをこちらに向けてくる。ジットリとなめ回すような視線に、私は体を萎縮させた。そんな私の様子に気づいたのか、章さんは何食わぬ顔で私から視線を外した。そして今度は興味津々と行った様子で近づいてきた。
「菫花さんて、蒼紫の何?」
「何とは?」
この人は一体何を言いたいのだろうか?


