不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。


 私の心に訴えかけるように、蒼紫さんが私の名を呼ぶ。伸ばされた手は私の頬に触れ、優しく撫でられる。愛おしいとその手が言っているかのようでくすぐったい。その手を受け入れるようにすり寄れば、蒼紫さんが嬉しそうに微笑んだ。そして蒼紫さんの瞳から一筋の涙が零れる。

 今度は私が蒼紫さんの頬に触れ、撫でるように流れ出る涙を拭ってあげた。

 こんな顔を私に見せてくれるなんて……。

 胸が早鐘を打ち体が熱くなる。

 蒼紫さんが私を求めるように唇が重なった。いつもの性急なキスではなく、甘くとろけるようなキスが続く。何度も何度もついばむようにキスが落とされ、口を開くと舌が入ってくる。驚いて舌を引っ込めようとすると、蒼紫さんの舌が私の舌を追いかける。

「んっ……ふっ……うっ……」

 頭がふわふわして、声が自然と漏れ出てしまう。

 自分から蒼紫さんを求めれば、それを察した蒼紫さんが嬉しそうに舌を絡め取ってくれる。

 しかしそこで菫花は我に返った。

「ふぁっ……まって……」

 舌を引っ込め顔を離すと、蒼紫さんが悲しそうな顔でこちらを見た。 

「菫花……俺を拒まないでくれ」

 私は……。

 あなたを拒めない。

「これからは俺に菫花を守らせて……。父さんでは無く、俺が菫花を守りたい」

 紫門さんは手紙で、私の気持ちを受け止めてくれる人に出会ったら、素直になれと言っていた。

 今がその時なのだろうか?

 あの手紙に書き記してあったように、私は自分の心に素直になって、私の気持ちを言わなければ……。

 菫花は胸の前で握り絞めていた手に力を入れた。

「蒼紫さんが私を……?守ってくれるんですか……?私は……私はあなたを……拒まない。嬉しい……です」

 私は胸の前で握り絞めていた手を解き、蒼紫さんの首に巻き付くように抱きついた。二人の体温を確かめ合うようにしばらく抱き合い、見つめ合った。それから少し落ち着いた私達はソファーに座り、手を繋いで沢山の話をした。繋いだ手が熱くて気恥ずかしかったが、手を離すことはしなかった。この人とふれ合っていたくて、この人の思いが手を通して流れ込んでくるようで、離れることが出来なかった。

 それから私は紫門さんとの出会いから、その後どのように二人で過ごしたのか、どんな話をしたのかなど、沢山の話をした。蒼紫さんも、自分が小さかった頃の紫門さんの話をしてくれた。紫門さんにそんな一面が?と驚くようなこともあった。しかし紫門さんは昔からお茶目な人だったと言うことが分かり、それが嬉しくて自然と笑っていた。


 笑った……。


 私は笑えたんだ。


 紫門さん……私……笑えたよ。