*

 副社長……蒼紫さんはあの日からやたらと私に触れたがった。それがただの気まぐれだと分かっているのに、私の心をザワつかせた。

 何度乱暴に唇を奪われても、紫門さんの面影が重なるこの人を、私は拒むことが出来ない。

 あの人がしたいようにさせてあげたい。

 キスをされながら、私は思わず蒼紫さんの背中に手を回した。すると蒼紫さんの体がピクリと震えた。

「お前、父さんともこういうことをしてきたのか?」

 その言葉を聞き、体から血の気が引いていく。

 この人は知っている……私と紫門さんの関係を……。

 私は首を左右に振って否定するが、蒼紫さんは「ふんっ」と鼻で笑った。

「別にかまわないさ」

 その言葉にズキズキと胸が痛んだ。

 別にかまわないとは、関係ないと言うことなのだろう。壁を作られたように感じた。

 少しずつ歩み寄れているような気がしていたから……辛いな。

 もうそろそろ離れないと。

「あの……副社長……」

「蒼紫だと言っただろう」

 蒼紫さんは私の顎を軽くつまむと、自分の顔の前にもっていく。紫門さんを思わせる瞳が私の瞳を捕らえる。

 そして重なる唇。

 蒼紫さんは言葉では冷たく突き放すのに、キスをする時はとても優しい。乱暴に唇を重ねながらも頭を優しく撫でてくれる。その優しさに心が震えた。

 蒼紫さん……。