唖然と固まっていると、私の耳に楽しそうな女子社員達の声が聞こえてきた。

「いい気味~」

「調子に乗っているからよ」

 あはははっ……と、女子社員達の笑い声は遠くなっていった。

 まさかこんなことをしてくるとは、思ってもみなかった。学生のイジメのような事を社会人になってもする人がいることに、菫花は驚いた。それと同時に、元上司を思い出す。あの人も私に罵詈雑言をぶつけ、ストレス解消していたのだから、いじめをする学生やこの人達と一緒だったのかもしれない。そう考えると、可哀想な人達だと客観的に見ることができ、哀れな人間だと思うことで少しだけ心が軽くなった。

 それにしても女性とは恐ろしい生き物だ。嫉妬に狂った女ほど怖い生き物はいないだろう。衝動的にこんなことをしたのだろうか?この姿を誰かに見られ、私が清掃会社の山田社長にでも話したらどうするつもりだったのだろ?自分達の首を絞めるようなものなのに……。

冷え切った体をブルリと震わせながら、トイレのカギを開けそっと外を確認した。するとそこにはもう誰もいなかった。そのことに
心底ホッし、息を吐き出した。

 三対一で暴力でも振るわれたら……。

 これ以上のトラブルはごめんだ。

 私は人に出会わないように自分のロッカーへと向かっていたのだが、そういう時に限って人と遭遇してしまうものなのだろう。

「お前……それはどうしたんだ?」

 振り向くと副社長が驚きを隠せない様子で立っていた。

「…………」

 私は何も言わずにそのばを離れようとしたのだが、副社長に腕を掴まれてしまった。

「おい、どうしたと聞いている」

「…………」

 何も言わない私に副社長は溜め息を付いた。

「もういい……」

 もういいのか……。

 見限られてしまったと思っていると、グイッと腕を引かれた。

「来い」

「えっ……」